2014年4月1日火曜日

日本の調査捕鯨は「違法」、国際司法裁が中止命じる:捕鯨政策見直し必至 消費影響は限定的

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ウォールストリートジャーナル     2014年 4月 01日 06:37 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702303702904579473880913466874.html

日本の調査捕鯨は条約違反、国際司法裁判所が判決


●シーシェパードが操縦するボブ・バーカー号の船首を横切る日本の捕鯨船(2月23日)

 【東京】
 国際司法裁判所は31日、南極海での日本の調査捕鯨が国際条約に違反すると結論付けた。
 日本の調査捕鯨に対する初の国際的な判決。日本は今後、捕鯨活動を大幅に縮小せざるを得なくなる見通しだ。

 今回の判決では、日本の捕獲量が調査目的としては多すぎると指摘した。
 国際捕鯨委員会は調査捕鯨を認めている。
 だがオーストラリアとニュージーランドは商業捕鯨に通じる裏道だと主張し、調査捕鯨に異議を唱えている。

 国際司法裁判所は、調査のために鯨を仕留めること自体は「不合理でない」との見解を示した。
 日本が小規模な調査捕鯨を継続する余地を残した格好だ。

 捕鯨をめぐる議論は何十年も続いているが、日本の捕鯨船と、抗議活動を繰り広げる反捕鯨団体シーシェパードとの対立が激しくなるにつれ、世界的に注目が高まっている。 
互いの船舶が海上で衝突し、船員が危険にさらされる事態も起きている。

 捕鯨問題では、賛成派も反対派も譲歩に前向きな姿勢を見せていない。
 日本は捕鯨が伝統文化だと主張する一方、オーストラリアはあらゆる捕鯨に反対の立場だ。

 2013年3月までの1年間で、日本は南極海と太平洋北部で422頭の鯨を捕獲した。
  内訳はミンククジラが285頭、イワシクジラが100頭、ニタリクジラが34頭、マッコウクジラが3頭。
 シーシェパードの絶え間ない妨害で捕鯨が難しくなり、05年の1238頭に比べると3分の1の捕獲量にとどまった。



毎日新聞 2014年04月01日 東京朝刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20140401ddm002040116000c.html

調査捕鯨:南極海の調査捕鯨中止 
捕鯨政策見直し必至 
消費影響は限定的




 国際司法裁判所(ICJ)の南極捕鯨裁判の判決が、調査捕鯨の前提である「科学的目的」を否定したことで、南極海での調査捕鯨継続は困難となった。
 鯨料理を「伝統的な食文化」としている日本政府は、商業捕鯨再開に向けた政策の全面的な見直しを迫られる。
 一方、鯨肉の国内流通量はピーク時の2%まで減少しているほか、南極捕鯨で捕獲した鯨肉は国内流通量の2割にとどまっており、消費者への影響は限定的との見方もある。

 国際捕鯨委員会(IWC)が1982年に決定した商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)は、クジラの科学的な資源評価を行ったうえで、90年までに一時停止を見直すことになっていた。
 日本政府は87年から調査捕鯨でデータ収集を重ねてきたが、IWCは捕鯨国と反捕鯨国の対立で機能不全に陥っており、商業捕鯨モラトリアムは見直されないまま継続している。
 今回の判決を受け、水産庁幹部は
 「商業捕鯨再開に必要な科学的データの収集ができなくなる」
と表情をこわばらせた。

 日本は南極海のほか、北西太平洋でも94年から調査捕鯨を実施。
 今回の判決は南極海に限定され、北西太平洋の調査捕鯨の停止は命じてはいないが、「科学的目的」を否定されたことで、北西太平洋でも捕獲数削減を迫られる可能性が高い。

 判決を受け、外務省や水産庁は商業捕鯨再開に向けた戦略の練り直しを急ぐ。
 IWC科学委員会が今年5月に行う南極海調査捕鯨の実績評価を踏まえ、調査計画を大幅に見直すことで新たな調査捕鯨を実施できるかどうか模索する。
 また、過去30年間の調査捕鯨のデータを活用し、IWCで商業捕鯨の再開を主張することも検討するとみられる。

 一方、商業捕鯨停止が長期化するなか、消費者の鯨肉離れも進んでいる。
 鯨肉は戦後の貴重なたんぱく源で、国内流通量は62年に約23万トンとピークをつけたが、2012年は5000トンに減少。
 このうち、北西太平洋の調査捕鯨が3割、輸入が2割を占め、南極海の調査捕鯨は992トンと全体の2割に過ぎない。
 ここ数年は消費の伸び悩みによる鯨肉在庫の増加が問題になったほか、IWCの商業捕鯨モラトリアムを受け入れず、商業捕鯨を行っているアイスランドやノルウェーからの輸入も可能なため、関係者の間では「鯨肉の供給量が不足する可能性は少ない」との見方もある。

 ◇「透明性欠いた日本」

 豪州が調査捕鯨差し止めを求めた訴訟で、国際司法裁が31日、日本側全面敗訴の判決を出したことについて、専門家からは「予想外に踏み込んだ判決」との驚きが広がっている。
 日本の調査捕鯨が「透明性や明確さを欠いた」点が動物保護の世論が強まる国際社会で受け入れられなかったとの見方が出ている。

 判決で日本の全面敗訴が読み上げられると法廷は緊張感に包まれた。
 鶴岡公二・政府代表は記者団の前で「残念であり、深く失望した。
 しかしながら、日本は国際法秩序や法の支配を重視する国家として判決には従う」と述べた。
 豪州代表団は日本側が感情的に反発することを警戒、勝利を強調することを控えている。
 キャンベル代表は笑顔も見せずに「国際司法裁は適切だった」と記者団に述べた。

 国際司法裁に詳しいアッサー研究所(ハーグ)のリベリンク・上席研究員(国際法)は
 「予想以上に厳しい判断。
 科学調査といいながら研究成果が乏しく、なぜ、何のために、いつまでやるのか、透明性、明確性が欠けていた」
と分析する。

 判決は、科学調査のため例外的に捕鯨を行うことまでは否定せず、日本の調査捕鯨も「科学目的と性格づける調査も含まれている」と指摘した。
 しかし
▽.87年から04年までの第1期調査と第2期調査の違いが明確でない
▽.非殺傷調査を増やす検討をしていない
▽.目標枠に比べミンククジラの捕獲量が少ない
▽.ナガスクジラの捕獲量も科学調査には不十分
▽.期限が切られていない
−−として「科学調査ではない」と断定した。

 科学調査であることが証明できない結果、商業捕鯨とみなされ、86年からの捕獲一時停止(モラトリアム)に違反するなどと判断されて全面敗訴となった。

 捕鯨に反対する市民団体IFAW(米国)のラメージ捕鯨問題担当局長は
 「商業捕鯨を存続させるため官僚が立てた複雑な理屈が国際社会では通じなかった」
とみる。
 自然保護団体は日本が北西太平洋で調査捕鯨を続行する場合は抗議する構えを見せている。

 一方、捕鯨を批判する欧米やオセアニアとの外交交渉で捕鯨問題が常に障害となってきた事実は否定できない。
 日本が調査捕鯨を断念すれば、外交的には評価を受けることになりそうだ。



ニューズウイーク 2014年4月17日(木)16時43分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2014/04/94-1_1.php

オーストラリア人の94%が反捕鯨の理由
An Obvious Target

捕鯨問題はオーストラリア国民が党派の枠を超えて結束できる数少ないテーマだ
デボラ・ホジソン(シドニー)


●聖なる動物 オーストラリア人にとって鯨は国家のシンボルに iStock/Getty Images

 オーストラリア大陸の南、タスマニア島のホバート港に環境保護団体シーシェパードの船が入港すると、スティーブン・ハーウィン(39)と10歳の双子の息子たち、7歳の娘はいつも港に駆け付ける。
 自家製のケーキと、家庭菜園で採れた野菜を差し入れして、日本の捕鯨船と戦っているシーシェパードへの感謝の気持ちを表すためだ。

 国際司法裁判所(ICJ)が先週、日本の南極海における調査捕鯨の即時停止を求める判決を下すと、ハーウィン一家は大喜びした。
 「重要な先例になる判決だ。
 この海域でクジラを捕ってはならないということが認められた」
と、タスマニア大学の博士課程に在籍するハーウィンは言う。
 「捕鯨業者がクジラを養殖して捕るのは勝手だが、私たちの海では捕鯨をしないでほしい」

 ごく普通の礼儀正しいオーストラリア人がここまできっぱり反捕鯨を主張することに、多くの日本人は驚くかもしれないが、捕鯨問題ほどオーストラリア国民が熱烈に結束できるテーマはない。
 10年1月に1000人を対象に行われた世論調査では、94%が捕鯨反対と答えた。

 反捕鯨は、党派の枠を超えた政策になっている。
 環境保護派の「緑の党」に始まり、左派の労働党、保守派の自由党と国民党に至るまであらゆる政党が捕鯨中止を訴えてきた。

 1788年にイギリス人の入植が始まって以来、1979年に禁漁を定めるまで、オーストラリアは鯨油目当てにクジラの捕獲を大々的に行っていた。
 その結果、東海岸ではザトウクジラが絶滅寸前まで追い込まれた時期もあった。

■「神聖な生物」と言うが
 しかし、オーストラリアは捕鯨に対する方針を転換し、クジラの「最大の敵」から「最大の味方」に変身した。
 今では、シドニー湾でザトウクジラの群れを見たり、巨大なサンゴ礁のグレートバリアリーフでミンククジラと一緒に泳いだりすることもできるようになった。

 オーストラリアは、お世辞にも野生動物保護の優等生とは呼べない国だ(17世紀以降の世界の哺乳類絶滅の3分の1は、オーストラリアで起きた)。
 クジラは、そんなオーストラリアが自然を保護していることを示す実例になるとも期待されている。

 今やクジラは巨大なビジネスになっている。
 クジラ関連の観光収入は年間3億豪ドルにも上る。

 それだけではない。
 オーストラリア人の間で、クジラは国のシンボルと位置付けられるようになった。
 「私たちにとって神聖な生物だ」と、地元のジャーナリスト、アンドルー・ダービーは言う。
 「日本人にとってのツルのような存在と言えるかもしれない」

 オーストラリア人は南極海を自分たちの裏庭と見なしているので、この海域のクジラへの思い入れが一層強まっている面もあるようだ。
 世界には80種類以上のクジラがいて、それぞれ絶滅の危険度は違うが、オーストラリアにとってそれは問題でない。
 クジラはクジラなのだ。

 多くの日本人の目には、オーストラリア人の態度は二枚舌に映るだろう。
 何しろ、オーストラリアでは毎年、3万〜6万9000頭のカンガルーが射殺されたり撲殺されたりしている。

 頭数が増え過ぎているとの理由でそれが認められているのだが、生態系コンサルタントのレイモンド・ムジャドウェシュの調査によれば、カンガルーの頭数は大幅に減っているという。

 「カンガルーを殺すのをやめるよう、日本がオーストラリアに圧力をかけるのは大歓迎だ」
と、筋金入りの反捕鯨派でもあるムジャドウェシュは言う。
 「自分たちの二枚舌を棚上げしたまま、反捕鯨を主張し続けるわけにはいかない」

 いずれ、「野生動物の敵」という批判の矛先がオーストラリアに向けられる日が来るのかもしれない。

[2014年4月15日号掲載]