
●アマゾンが開発中の無人配達機
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ウォールストリートジャーナル 2014年 1月 16日 11:05 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702303919304579323372047267480.html?dsk=y
激変する米労働市場―全職種の約半数が20年以内にIT化で淘汰
弾みがついたかに見えた米国経済だが、新年早々、おめでたくないニュースが飛び込んできた。
1月10日に発表された昨年12月の米雇用統計が予想を大きく下回り、就労者(非農業部門)が前月比で7万4000人増にとどまったのだ。
10月、11月と連続で、力強い雇用回復に必要とされる20万人を超えていただけに、天候による一過性の落ち込みという声もある。
だが、記録的な長期失業者の多さやベビーブーマー世代の引退による労働人口の低成長見通し、若年層の就職難に加え、米国の700を超える職種の約半数が、IT(情報技術)化で10~20年以内に消える「高リスク」にさらされていると言われるなか、米労働市場にバラ色の未来を期待するのは禁物だ。
失業率は、11月の7%から6.7%に下がったが、これは、もっぱら仕事探しをあきらめた人が労働市場から脱落したためだ。
米シンクタンク「予算・政策優先センター」によると、12月の1カ月間で、労働人口(16歳以上の就労者、または求職者)は34万7000人減った。
16歳以上の総人口に占める労働人口の割合を示す労働参加率は62.8%と、昨年1年間で0.8ポイント低下している。
1978年以来の低水準だ。
長引く求職活動に疲れて再就職を断念する人たちの存在も深刻になっている。
今も失業者(1040万人)の4割近くを占める長期失業者の中から、さらに仕事探しをあきらめる人たちが続出すれば、1月も、失業率だけが大きく下がる可能性がある。
求職活動を断念した人たちなどを入れれば、失業率は13.1%にハネ上がる。
労働市場がノーマルな状態に戻るには、まだ790万人の職が足りない(米シンクタンク「経済政策協会」調べ)。
次に7万4000人の内訳だが、これは、すべて女性の貢献によるものだ。
米シンクタンク「女性政策研究協会」によれば、女性が7万5000人増を記録したのに対し、男性は1000人減。
女性は、不況で失った全雇用をすでに取り戻し、総就労者数も最高記録を続伸しているが、男性は、喪失した600万人分の75%しか回復できていない。
特に12月は、建設(1万6000人減)、製造(6000人増)など、男性主導の業界が振るわなかったため、小売り(女性、3万8500人増)やレジャー・接客業(同、1万8000人)などの伸びが目立ち、「男女格差」が生まれた。
こうした短期的な数字はさておいても、先月、米労働省が発表した2012~22年の長期雇用予測では、ベビーブーマー世代の引退に加え、若年層や働き盛りの世代の労働参加率が低下することで、22年までの労働人口の成長率は年0.5%どまりだという見通しが出ている。
また、職種別成長予測からは、IT(情報技術)革命による雇用の構造的変化が読み取れる。
22年までに最も大規模な雇用減が予想されるのは、コンピュータや技術革新による省力化・効率化が急ピッチで進む事務系、および製造業などの製作関連の仕事(機械工や印刷工など)だ。
職種別では、郵便局員が13万9100人減と数が一番大きい。
電子メールやソーシャルメディア、オンラインバンキング決済の普及による文書郵便の激減、自動仕分けの技術革新などの影響だ。
事務系では、54.2%減が予想されるデータ入力、21.3%減のタイピスト、重役秘書・事務アシスタント(10.5%減)などの減少率が目立つ。
ネット予約の台頭により、トラベルエージェント(約9%減)も減少の一途をたどっている。
交通機関のチケット予約係や事務員(約20%減)も、20年後には過去の遺物になっているかもしれない。
前近代的なアムトラック(全米鉄道旅客輸送公社)でさえ、最近、ネットでの予約や変更などのサービスを推進し始めた。
IT革命によって米衰退産業の1つと化したメディア業界も例外ではない。
オンライン媒体の林立にもかかわらず、記者・特派員も、5万1000人(2012年)から、22年には7.1%減の見込みだ。
昨年9月に発表された、英オックスフォード大学の学者らによる研究によると、米国の702職種の47%が今後10~20年くらいの間にコンピュータ化やロボットに置き換えられ、淘汰される「高リスク」を抱えているという。
つまり、約半数の米国人が、「クリエイティブ、かつ社会的な技能」でスキルアップし、早めに転換を図らないと失業の憂き目に遭い、IT時代の転職市場で使い物にならなくなる恐れがあるというわけだ。
上記分析では、コンピュータ化・自動化の確率が99%と最も高く将来的になくなる公算が大きい仕事のナンバーワンが電話セールスだ。
確かに、昨今かかってくる宣伝関連の電話の多くは自動音声によるものが多い。
税額計算ソフトやネット申告で需要が激減している税理士や所得税申告代行人(代行会社のアシスタントなど)の仕事もIT化の確率が99%で、702職種中8番目になくなる可能性が高い。
オンラインバンキングの影響により、新規口座受付係(99%)も10位にランク入りしている。
データ入力(同)は12位、簿記・会計・監査事務(98%)は32位といった具合だ。
また、ロボットの普及などにより、輸送・物流業界も激変が予想される。
出荷などの事務が24位(98%)、ドライバー・セールス関連が29位(同)と、人間の出番が少なくなりそうだ。
ウォール・ストリート・ジャーナルでも報道されたように、米アマゾンは、無人飛行機による配送や倉庫内でのロボット活用を目指しているという。
CBSニュースによれば、実際、アパレル業界などの配送を代行する米東部の物流会社では、100人が働く大型配送センターで、69台の小型ロボットが縦横無尽に「活躍」している。
あらかじめ顧客別の注文品をプログラミングされたカラフルな長方形の円盤型ロボットが指定在庫棚に移動し、作業員から商品を「受け取る」と次の在庫棚に移動する仕組みだ。
作業員は、広い配送センター内を歩き回る手間と時間を省くことができる。
ロボット1台で人間1.5人分の仕事をするため、「人件費」も大幅に浮く。
20年後には、現在ある仕事の半分近くが消え、高度スキルを必要とする新たな仕事に生まれ変わっているであろう米労働市場――。
12月の雇用統計が一過性のものであろうとなかろうと、
サバイバルの階段の傾斜が、刻一刻と高く険しくなっていくことだけは間違いない。
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肥田美佐子 (ひだ・みさこ) フリージャーナリスト
東京都出身。『ニューズウィーク日本版』の編集などを経て、1997年渡米。ニューヨークの米系広告代理店やケーブルテレビネットワーク・制作会社などに エディター、シニアエディターとして勤務後、フリーに。2007年、国際労働機関国際研修所(ITC-ILO)の報道機関向け研修・コンペ(イタリア・ト リノ)に参加。日本の過労死問題の英文報道記事で同機関第1回メディア賞を受賞。2008年6月、ジュネーブでの授賞式、およびILO年次総会に招聘され る。現在、『週刊東洋経済』『週刊エコノミスト』『ニューズウィーク日本版』『プレジデント』などに寄稿。ラジオの時事番組への出演や英文記事の執筆、経済・社会関連書籍の翻訳も行う。翻訳書に『私たちは"99%"だ――ドキュメント、ウォール街を占拠せよ』、共訳書に 『プレニテュード――新しい<豊かさ>の経済学』『ワーキング・プア――アメリカの下層社会』(いずれも岩波書店刊)など。マンハッタン在住。 www.misakohida.com
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JB Press 2014.02.06(木) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39880
人類はロボットによって二分され、支配されるのか?
第2機械時代の到来、危険を理解していないと大変な目に遭う恐れ
(2014年2月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
アラジンはランプを1度こするだけで、すべての望みを叶えることができる知的な存在を意のままに操ることができた。
この魔神は身体を持たない精霊だったが、体力も知力もある人造の召し使いがほしいという人々は、手で触れることのできる身体を持つそのような存在も夢見てきた。
そして今日、シリコンや金属、プラスチックでできた身体を持つ召使いは現実のものとなりつつある。
だが、果たしてこれは「夢」なのだろうか?
それとも「悪夢」なのだろうか?
頭のいい機械は我々の助けになるのだろうか?
それともフランケンシュタインの怪物になるのだろうか?
■真の機械知能が創造され、全人類がネットワークで結ばれる世界
この問いは、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のエリク・ブリニョルフソン氏とアンドリュー・マカフィー氏の新著『The Second Machine Age(第2機械時代)』が示したものだ。
この本によれば、我々はこれから
「人類史上最大級の素晴らしい出来事に2つ遭遇する」
という。
「
①.真の機械知能が創造されることであり、
②.共通のデジタルネットワークを介して全人類が結ばれてこの惑星の経済のあり方が変わることである。
イノベーター、起業家、科学者、機械いじりが好きな人、そのほかいろいろなタイプのオタクがこの宝の山を活かし、我々を驚かせ、喜ばせ、そして我々のために働く技術を築き上げることになる」
第1機械時代と第2機械時代の違いは「知力」にある。
第1機械時代の機械は人間や動物の肉体労働を丸ごと引き受けたり、こなせる仕事の量を何倍にも増やしたりした。
第2機械時代の機械は知力を使う我々の仕事を丸ごと引き受けたり、我々の知力を何倍にも高めたりするという。
この革命の推進力は、コンピューターのデータ処理能力の指数関数的な向上(あるいは、そのコストの指数関数的な低下)である、と筆者らは言う。
これについてよく知られているのは、インテルの創業者の1人、ゴードン・ムーア氏にちなんだ名前を持つ「ムーアの法則」だ。
過去半世紀の間、1枚の半導体チップに搭載されるトランジスタの数は少なくとも2年おきに2倍に増えてきた。
同様な進歩はほかの分野でも起きている。
ブリニョルフソン氏とマカフィー氏は、機械知能の分野では半世紀の前進を経て飛躍的な進歩が生じていると指摘する。
データ処理能力が指数関数的に向上するにつれて、コンピューターは数年前にはとても無理だと思われていた仕事でもこなせるようになっている、機械知能も程なくあらゆる場面で使われるようになるだろう、というのだ。
両氏は1つの例え話として、チェスを発明した人物がそのほうびに米粒を要求する話を紹介している。
チェス盤の1マス目には米を1粒、2マス目にはその倍の2粒、3マス目にはその倍の4粒といった具合にチェス盤のすべてのマス目に米粒を乗せてほしいと頼むのだ。
盤の前半は何とかなるものの、後半になるとその数は莫大なものとなる。
我々が手にする恩恵も同様に増えていくだろう、というわけだ。
しかし、同じMITの経済学者でノーベル経済学賞を受賞したロバート・ソロー氏が1987年にコンピューターについて述べた有名な警句を踏まえて言うなら、今やIT(情報技術)は、生産性の統計を除くあらゆる場所で目にすることができる。
■ITの飛躍的進歩にもかかわらず生産性が上がらない理由
米国の労働時間当たり国内総生産(GDP)のトレンドは、ごく月並みなものにとどまっている。
1990年代から2000年代前半にかけては、期待を抱かせる高い伸びを示したものの、その後は再び伸び悩んでしまっている。
経済規模の大きなほかの高所得国における最近のパフォーマンスはもっと悪い。
考えられる理由の1つに、ITの影響は過大評価されているというものがある。
意外なことではないが、ブリニョルフソン氏とマカフィー氏はこれに与しない。
両氏は実際、情報技術の可能性は枯渇するどころか無限大に存在する、と述べている。
「デジタル化により、ほぼどんな状況とも関係が生まれるような膨大な量のデータが利用可能になる。
そしてこの情報は無限に再生産・再利用することができる」
と言う。
もしそうだとしたら、計測されているGDPの伸びがこれほど小さいのはなぜなのか?
これについては、いろいろな理由が挙げられている。
安価または無料のサービスが多すぎる(スカイプやウィキペディアなど)、自分で作っていくエンターテインメント(フェイスブックなど)の規模が大きい、新しい製品やサービスを統計がフルに考慮できていない、といった具合だ。
なるほど、2007年6月以前には、「iPhone(アイフォーン)」は地球上で最大のお金持ちですら手の届かない代物だった。
その価格はまさに無限大だった。
その後は有限の値に下落したものの、この下落は物価指数には反映されていない。
また、デジタルの製品・サービスの「消費者余剰(消費者にとってのそれらの価値と、市場でついている価格との差額のこと)」は非常に大きいことが多い。
さらに言えば、GDPの計測では無形資産への投資が過小評価されている。
新しいデジタル製品の普及や、限界費用がほかとは比べものにならないほど低いデジタル経済の興隆は、人々の福祉やGDPに影響を及ぼしている、そしてこの影響は今日の指標で示されているものよりもはるかに大きい――これは実にもっともな話だと思われる。
■所得の伸び悩み、勤労所得の格差拡大、長期失業の増加・・・
しかし、心配はまだ残る。
情報化時代が進んだのは経済のトレンドが下向きになった時代、すなわち実質所得のメジアン(中央値)が伸び悩み、勤労所得の不平等が拡大し、労働・資本間の所得分配における不平等も拡大し、長期失業者が増加した時代でもある。
実際、情報化時代はある程度、こうした下向きトレンドを引き起こしてきたに違いない。
これに対する説明はいくつかある。
製造業における生産性の急拡大、
スキルに偏りのある技術変化、
世界的な勝者総取り市場の台頭、
そして特に知的財産から得られる使用料・賃貸収入の役割
などが主なところだ。
グーグルの検索アルゴリズムを開発するコストとその価値の差を考えてみるといい。
グローバル化と金融自由化も作用している。
どちらも、やはり新技術に後押しされた流れだ。
何にも増して、これはまだ序の口だと本書は主張する。
★.定型的な頭脳労働の大半は、かつて事務員の能力に起きたようにコンピューター化されるだろう。
★.中所得の職はさらに空洞化される可能性がある。
その結果、所得の2極化がいっそう進み、上位の小さな勝者集団とその下で苦しむずっと大きな集団に分かれるかもしれない。
例えば、2012年には米国の上位1%の高額所得者は全所得の22%を稼ぎ、その割合は1980年代から2倍以上に拡大した。
■不安を抱くべき理由
人々がこうした状況に不安を抱く妥当な理由がある。
①.まず、最下位の人たちの生活は一段と悪化するかもしれない。
ブリニョルフソン、マカフィー両氏は、高卒の資格を持たない米国の白人女性の平均寿命は1990年から2008年にかけて5年短くなったと指摘している。
②. 次に、所得が過度に不平等になると、若者の機会が失われていく。
③.第3に、富裕層はその他の人の運命に無関心になる。
④.最後に、とてつもなく大きな権力の不平等が生じ、民主的市民権の理想を台無しにする。
遠い将来には、考える機械は我々の自意識をも圧倒するかもしれない。
ちょうど、今では人間のチェスの名人たちが、自分が地球上で一番ではないことを知っているように。
だが、ブリニョルフソン氏とマカフィー氏はそれよりずっと前に、所得格差がさらに拡大し、やはり本書が約束している好機の白銀時代を損ねてしまう可能性が高いと述べている。
つまり、新しい機械がフランケンシュタインの怪物になるのを防ぐためには、現在、そして将来にわたり、大きな課題が生じるということだ。
これらの課題は、財産権や教育、課税に関する公共政策、人間の福祉の増進を狙ったその他の政府施策に大きな影響を与える。
こうした物議を醸す問題については来週検討する。
By Martin Wolf
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JB Press 2014.02.13(木) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39930
ロボットを奴隷にして貧しき者を解放せよ
(2014年2月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
1955年に全米自動車労働組合(UAW)のウォルター・ルーサー会長は、自動化されたフォード・モーターの新工場を訪れた時のことを次のように語っていた。
案内をしてくれた人物が、ずらりと並んだロボットを指さしてこう言った。
「さてさて、君たちはこのロボットたちからどうやって組合費を集めるのかねぇ」。
ルーサー氏はこう切り返した。
「それに、経営陣はこの連中にどうやってフォードの車を買わせるんでしょうねぇ」
今となっては、工場のオートメーション(自動化)は特に目新しいことではない。
その影響を巡る議論もしかりだ。
では、エリク・ブリニョルフソン氏とアンドリュー・マカフィー氏が「第2機械時代」と呼んでいるものは、この議論における問いや答えをどの程度変えるのだろうか?
両氏の主張の概要は、先週の本欄で紹介した通りである。
筆者はその中で、IT(情報技術)の発達と所得の不平等の拡大が同時期に起きていると指摘したが、米ワシントンに本部を構える経済政策研究所(EPI)のローレンス・ミシェル氏は、ITの発達が所得の不平等拡大の最も大きな原因だという見方に異を唱えている。
■ITの発達が所得の不平等拡大を招くのか?
すなわち、
「所得が最も多い階層が手にした所得増加分の3分の2は、企業幹部への報酬引き上げ、そして金融セクターの拡大(そして同セクターにおける報酬引き上げ)で説明できる」
という。
社会規範の変化、株式報酬の増加、そして金融セクターの尋常でない拡大なども寄与している。
ITは1つの要因ではあるものの、それが経済面の結果を決定づけたのではない、というのだ。
しかし、ITはそれよりもはるかに重要な要因になり得る。
ブリニョルフソン氏とマカフィー氏は、ITは我々をもっと豊かにしてくれると説く一方で、労働者間の機会の分配、そして労働者と資本の所有者との間の機会の分配にも変化をもたらすだろうと論じている。
新しい技術が経済に及ぼす影響は、たくさんある上に複雑である。
フェイスブックなどの新しいサービス、アップルの「iTunes(アイチューンズ)」やアマゾン・ドット・コムによる古い流通システムの中抜き、スマートフォンなどの新製品、そしてロボットのような新しい機械などがその一例だ。
このうちロボットの進歩は、
知能機械によって大変な数の人々が余剰人員にされてしまう
との恐怖感を呼び起こしている。
オックスフォード大学のカール・フレイ氏とマイケル・オズボーン氏が最近まとめた論文によれば、
米国の雇用の47%は自動化されるリスクが高いという。
19世紀には機械が職人に取って代わり、未熟練労働者に恩恵をもたらした。
20世紀にはコンピューターが中所得者の職に取って代わり、労働市場の二極化をもたらした。しかし、今後数十年においては
「運輸・物流業界の労働者の大部分、オフィスで働く事務職や経営者支援スタッフの大部分、そして製造現場の従業員がコンピューター資本に取って代わられる公算が大きい」
そうだ。
また、
「コンピューター化は近い将来、求められるスキルが低く賃金も低い仕事で主に進められることになろう。
対照的に、求められるスキルが高く賃金も高い職業は、コンピューター資本の影響を最も受けにくい」
という。
これでは、不平等は拡大してしまうだろう。
コロンビア大学のジェフリー・サックス氏とボストン大学のローレンス・コトリコフ氏は、
生産性の向上は将来の世代の暮らし向きを全体的に悪化させるかもしれないとまで論じている。
労働者をロボットに置き換える動きが進めば、所得は労働者からロボットの所有者に移転しかねない。
ロボットの所有者の大半は引退した人々だろうし、そうであれば若年層よりも貯蓄をしないと考えられる。
すると、人的資本への投資は減ることになるだろう。
若年層には、教育を受ける経済的な余裕がないかもしれないからだ。
また、経済全体の貯蓄が減ることになるから機械への投資も減るだろう――というのである。
潜在生産性の上昇が我々の暮らし向きを長期的に悪化させるというこの議論は、なかなか独創的である。
ただ少なくとも筆者には、現実化する可能性がもっと高い事態がほかにあると思われる。
具体的に言うなら、
★.労働者が解雇される過程で大規模な調整ショックが生じるとか、
★.未熟練労働の市場賃金が下落し、社会的に受け入れられる最低水準をも大幅に下回るとか、
★.ほかの新しい技術とともにロボットが所得分配を今よりもはるかに不平等なものにしてしまう
といった事態だ。
新技術の悪影響を避けるためにすべきこと
では、一体どうすればよいのだろうか?
★.第1に、新しい技術には良い面と悪い面があるだろう。
その良い面を伸ばし、悪い面を制御すればよい。
★.第2に、教育は魔法のつえではない。
30年後にどんなスキルが求められるか我々には分からない、というのがその理由の1つだ。
また、フレイ氏とオズボーン氏の予測が正しければ、低位・中位のスキルが必要な仕事があまりにも多く失われる恐れがあることになるため、年齢が18歳を大きく超えているすべての人々や多くの子供たちにとっては、事態は既に手遅れなのかもしれない。
さらに、創造的なサービスや起業家精神に富んだサービス、高度な知識を要するサービスなどへの需要がたとえ必要なだけ伸びるとしても(恐らく、そうはならないだろうが)、そのようなサービスを提供できる人はやはり少数であろう。
全員をそうした人材に育てるというのはどう見ても幻想だ。
★.第3に、レジャーというものを再考しなければならない。
歴史を振り返れば、最も豊かな階層は長い間、額に汗して働く大衆の犠牲の下にレジャー三昧の暮らしをしていた。
知能機械の進歩により、今日でははるかに多くの人々が、他者を搾取することなく同様な生活を送ることができるようになっている。
今日支配的な厳格主義では、そのようなだらだらした暮らしは認められない。
ならば、もっと人々が忙しく遊べるようにしてはどうだろうか。
それこそ、人類がこれまで築き上げてきた繁栄の真の目標なのではないだろうか。
★.第4に、所得と富を再分配する必要が出てくるだろう。
その再分配は、すべての成人に最低限の所得を保障する一種のベーシックインカムや、何歳になっても教育や職業訓練の費用補助を受けられる仕組みの導入といった形を取る可能性があるだろう。
そうなれば、もっと楽しい人生を送れる可能性が現実のものになるかもしれない。
その財源は、汚染物質などのバッズ*1への課税や、レント(土地の地代、知的財産権の超過利潤など)への課税で得られるだろう。
財産権は、社会的に生成されたものである。
ごく少数の人々が新しい技術から莫大な利益を得るべきだという考え方は、再考すべきである。
例えば、国家が保護している知的財産権による所得の一部を、国家が自動的に徴収するというやり方もできるだろう。
★.最後に、もし労働者の削減が加速するのであれば、潜在的な供給力の増加に合わせて需要が伸びるようにすることも必要不可欠だろう。
それに成功すれば、職の不足にまつわる心配の多くは消えてなくなるだろう。
ここ7年間でそれがなされ得なかったことを考えれば、実現は難しいのかもしれない。
しかし、もし我々がそれを望むのであれば、望まない場合よりもいい結果が出るのではないだろうか。
■結果を決めるのは技術そのものではなく制度機構
知能機械の進歩は、歴史の1つの節目である。
これによって経済を含むいろいろなものが変わることになるだろう。
しかし、その潜在力は明らかであり、知能機械は、人類がはるかに良い生活を送ることを可能にしてくれるだろう。
実際にそうなるか否かは、知能機械の利益をどのように生み出して分配するかにかかっている。
ごく一握りの勝者がとてつもない富を得て、大多数の人々が敗者になるという結果に終わる恐れもある。
しかし、それは運命ではない。
もしそういう結末になるとしたら、それは人々がそう選択した結果なのである。
テクノ封建制度のようなものは要らない。
どんな結果になるかを決めるのは技術そのものではなく、政治経済の制度機構なのだ。
もし我々の望む結果が現在の制度では得られないのであれば、そうした制度は変えなければならない。
*1=マイナスの価値を持つ財のこと
By Martin Wolf
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【気になる2014】
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